2011年11月8日火曜日

芸に生きる − 三味線・江戸唄の西松布咏さん

photo:Toshihiro Shimizu

JCDN mizunoです。
今日は裏話しでもなんでもなく、王道話しですが、京都初演に先立つ公演見所話しvol.3です。
DANCE×MUSIC×MOVIE!の<MUSIC>として今回初登場の邦楽。
三味線、江戸唄の西松布咏さんに、ご出演いただくことになりました。
そのことをご紹介します。

昨今の日本人は着物を着るどころか、たたむことさえできないテイタラク。
能や歌舞伎、狂言など日本のお宝ともいうべき日本文化が、日常生活の中から遠い存在になってしまってかれこれ、数十年。
ちょっと鼻歌で都都逸(どどいつ)を、なんて粋な輩にトンとお目にかかりまぬ。むろんそういう自分も例外ではあらず。

前のいいなさんの「邦楽聴こうぜ」の松岡正剛氏のエッセイおもしろいですね。いやーこの奥が深い三味線の魅力、是非皆様に、必読!おすすめです。
そんな深い世界ですが、私がここで西松さんをご紹介できるのは、このアジールに参加いただいたごく一部ですが、その一端の魅力をお伝えできればと思いキーを打ち始めます。

舞踏家・大野慶人氏や、北園克衛というシュール詩人、かと思えば江戸時代の女性の恋愛を綴った唄々、と西松さんがコラボしているという、なんだか尖がったアート感のある「儚」というDVDが、西松さんとの初めての出会いでした。
そこから聞こえてきた緊張感のある三味線の音は、NHK教育番組で流れてくる芸能百選とは、かなり違った趣で脳裏に焼き付いていました。
実は、どちらかというと、映像資料として飯名さんから見せてもらったのですが、邦楽というBGM的な印象とは、あきらかに違う音色と唄が鮮烈でした。

そんな偶然の出会いから、この企画に参加してもらえないかと思い立ち、「西松流家元」という西松さんにお目にかかりに白金台の稽古場のドアを叩く際は、清水の舞台から飛び降りる気持ちで緊張。実際の西松さんは、家元というイメージとはかなり違って、とーてもかわいらしい可憐な女性でした。
そして、達筆のお手紙やメールをいただく最後には「御目文字楽しみに」などと、江戸の言い回しが随所に生きています!

そんな日常の印象とは一転。唄う時の唄声は、マイクなしなのにスタジオ中に響くど迫力のある艶っぽい、そして伸びの在る唄声に変わります。
6歳から修行を始め、この道が心底好きだったということで、やめることは一度として考えなかったそうです。毎日毎日、稽古稽古を積み重ね、いまの声が出るようになったとのこと。
まさに、芸に生きるです。
3月の京都での試演会の観客からは、「西松の声を聴くとゾワッと鳥肌が立った」という感想もありました。

photo:Toshihiro Shimizu

今回は、そんな西松さんが初体験。特出しアカペラ英語歌詞 JAZZ by Nishimatsu があります!

西松さんの唄う江戸唄は、吉原の遊女の唄から、江戸時代の女性の切ない恋心をうたったもの。
あるとき西松さんが「女性の気持ちを綴ってはいるけれど、これは実は、作者は全部男性が書いたものなんですね。だから、これは男性の理想の女性像でもあるし、男性がオレの気持ちをわかってほしい、という唄でもあるんです。」と。
なるほど、大人の恋愛の駆け引き奥が深いですね。

西松さんの演奏会のとき演奏と演奏の間に、必ずその唄の時代背景や、唄の意味を語りで話す方法をとっているそうです。
確かに江戸唄の歌詞の意味は、現代人にとってもはや歌詞カードをみながらでないと理解不能、外国語に等しい。
そういう解説があると楽しんで聴けますね。邦楽がや伝統芸能が遠い存在になってしまった今、現代人に楽しんでもらうために、鑑賞者よりのエンタテーメントのシカケが設えてあるのはスバラシイことですね。
私たち現代アートの世界もその工夫が必要だと学ぶことが多いです。


はてさて、そんな未知の世界がたくさんある西松さんの登場によって、初の邦楽DANCE×MUSIC。
TVのドキュメント番組でもよくあるように、大歌舞伎の初日を迎える前日に、稽古はロビーで顔合わせ、1回だけしか行わないという。えーーーなんでそれでできるのさー、と思うくらいあっさりしたもんだ。何故ってそこにいたるまで、個々の役者が完璧な芸を携えているから、リハーサルは「お手合わせ」程度だということなのでしょう。今回、DANCEとMOVIEと西松さんの世界、リハーサルからして、ここまで違うもの同士、ワクワクですね。そんな違いから、多くのヒントをいただきました。

飯名さんから、西松さんの稽古場や演奏会に通い「アジール」のための選曲を通して、「メリヤスもの」という曲の伸び縮みに自由度を持つ、踊りとの間を楽しみ、即興の余裕をもたせるための曲があることをおしえてくれました。
今回の見せ場のシーンで寺田みさこさんが踊る曲は、いわゆるそのメリヤスもの、です。
そして演出家のお題。
音楽とのコラボが売りのこの企画だが、あえて曲に合わせない振付・ダンスをすることに。これは、本WEBのプレスリリースにも詳細がありますので、ご覧ください。

新作「アジール」は、初の邦楽家 西松布咏さんを迎えることで、たくさん楽しんでいただける初体験を皆様にご用意しています。巾広い選曲で西松さんの三味線演奏と唄声をどうぞお楽しみに!
もちろん、ダンスと映画との競演もです。